日常と非日常のあいだで  その伍「イラン人同性愛者シェイダさん」

 私が外国人労働組合でスタッフとして活動していたときにシェイダさんと知り合いました。91年、シェイダさんは、イランからやってきました。その頃私は、シェイダさんが同性愛者の迫害などで自分の身の危険を感じて、日本に逃れてきたなどとは知りませんでした。私の中のシェイダさんは、ただの恥ずかしがり屋のイラン人だったのです。シェイダさんは、私が、外国人労働組合だけではなく、同性愛者やHIVウィルスに感染した人たちともつきあいがあることを知って、「紹介して」と言ってきたのです。早速、友人たちが都内でイベントするというので、そこにシェイダさんと一緒に行きました。

 いろんなセクシュアリティを持った人が、悩んでいるけどポジティブ思考で生きていることの心地よさは、シェイダさんのうれしそうな表情からもわかります。そんなシェイダさんが、100人近くいるであろう不特定多数の前で、自ら発言を求めたのです。「私はゲイ。私の住んでいた所はイラン。イランではゲイは処刑されています。イスラム圏でのゲイの処刑に反対します」この発言をするのに、シェイダさんは、日本に来てから約8年の歳月と勇気を必要としました。イランでは、多くの同性愛者が処刑され、日本でもその危険を身にしみて一番感じていたのは、シェイダさんなのです。

 しかし、そのシェイダさんに、法務省は、難民認定を棄却しています。それは、イランで同性愛者であるということを「黙っていれば大丈夫」であり、難民申請をするのが遅い「イランに強制送還だ」と言うのです。迫害があるから「沈黙」があるのです。そんなことを難民である人に平気で言い放つ人権意識が日本政府の本当の姿なのです。

 現在、シェイダさんは、強制送還の決定を違法として、これを取り消すことを要求する行政訴訟を起こしています。12月18日、東京地裁で結審です。シェイダさんの陳述は、必ずや多くの同性愛者や沈黙を余儀なくされている人たちの存在を励ますことでしょう。

なぜ難民に?シェイダさんの祖国イラン

 シェイダさんの祖国イランでは、25年前の革命で、イスラム教シーア派の教えが国の統治原理となった。シーア派の刑法では、「ソドミー(同性間性行為)をした者は死刑」とはっきり定められており、80年代には、数多くの同性愛者が「地上の腐敗者」のレッテルを貼られて処刑された。90年代になっても、「ソドミー」を理由に処刑された人は、公になっているものだけでも15件ほど確認されている。むち打ち刑や自警団による拉致・リンチなどのケースは数知れない。

 シーア派では、「ソドミー=死刑」の規定は、「人の手で変えることのできない (神が定めた)法」の一つとされ、イスラム体制がある限り、国会もこれを変えるこ とはできない。これを変えろと主張することは、イスラム体制をやめろと主張するこ とと同じであり、国を脅かす反体制派というレッテルを貼られることにもなる。シェ イダさんは同性愛者であることに加えて、「ソドミー=死刑」の規定を変えるべきと 主張しており、祖国に帰れば政治犯とみなされることは確実だ。(S)


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