石播に見る国民徴用の先行事例

 五月二三日、東京土建新宿支部会議室で行われた平民連学習会第二弾「どうなる有事法制」「石川島播磨重工の先行事例に見る国民徴用の実態と国会報告」は三六人の参加で成功裡に終わった。

 しかし、その後、有事法制は国会を通過、さらに何が何でも自衛隊の海外派兵の既成事実をつくろうと考え、アメリカの言いなりになり、イラク派兵を約束してきた小泉内閣と与党は、「イラク復興特別措置法」を上程、最後は怒号の中で大きな疑問と明らかな憲法違反の自衛隊の派兵を決めた。平和新聞新宿版(平和通信)の編集部は、このたびの学習会の内容が、俗にプログラム法と言われる有事法制の今後を考える上で非常に有意義な内容を含み、今後の政治(有事法制に付随する法案の前途)を見守り反対運動を草の根から展開する上で参考になるものと考え、(石川島・播磨)渡辺氏の校閲を得て、新宿平和通信の夏季特集としてこれを採録、発行する。会員、および読者の皆さん、今石川島播磨で行われている内容はリストラに脅える日本の労働者の上に覆い被さる典型的な労務管理であり、今から六〇年前の国民総動員法を通したあとに出て来た「青紙」と称せられた国民徴用の先取りに他ならない。このことを踏まえて目を通していただきたい。

 はじめに国会報告をしていただいた大門参議院議員の今後の活動についての留意点を掲載、本番の渡辺氏の内容を収録する。

大門参議院議員の国会報告(当時の国会報告がありましたが時間が経過しておりますので、これからの問題だけに絞って掲載する。)

 率直な話ですが、このままスムースに進みますと、国会は数の力ですから通されてしまいます。精神面で「断固反対」と幾ら叫んでも彼ら(野党)の状態が今までお話したような状況ですので、この法案は通されます。しかし、この法案は、これで、終わりませんね。どういうわけか知りませんが、国民の皆さんは有事法制について半数以上(70%)が賛成ですね、これは、私たちが言っていること、(法案の中身が「日本を守る」ものではない、)ということが伝わってはいないことが原因なのかも知れませんが…国民の皆さんの中に本当のことが伝わっていない。しかし、この法案が通ってしまいますと、今回の有事法制は俗に「プログラム法」といわれています。つまり中身がはっきりしていないのですよ、これから一年二年かけて米軍支援の法律だと言うことが具体的に出てきます。その時には国民の皆さんも目を開いてくると思います。衆議院を通ってしまってこれで終わりだと、ですから二年後の結論まで固定して考えてしまって諦めておられる方がいるかも知れませんが、闘いはこれから、まだまだ続くと考えていただきたいと思います。ですから今のうちに二年後にアメリカの戦争に協力するための法案であり、また私たち国民の生活を拘束し、協力しなければ「罰則規定」まであることなどを宣伝し、内容を把握した仲間を増やして行くことが大切だと思います。

 もう一つは、健保の三割負担のときもそうだったのですが、あの時は、形ばかりにしろ民主党も反対でした。衆議院の採決は盛り上がったのですが、通ってしまって参議院に入ったときにやはり下火になりました。しかし、段々と盛り上がり最終盤にうちの小泉議員が帝京大学の問題でいろいろな材料が急に入って追求したわけです。国会はあの追及が後一日延ばせれば廃案に出来たわけです、後一日の問題で健保三割負担は廃案に出来て、今ごろ苦しまなくても済んだわけです。最後に民主党が…、とにかくもう少しのところまで行ったわけですから、先ほど言いましたが「大きく構えて」何が起こるかわからないと言うのが政治の世界です。ですから冷静な判断と大きな視点を求めて運動していただきたいと思います。唯の精神論では困りますが、これからの運動を大きく構えて粘り強い闘いを組んでいただきたい。

 今日陳情に来られた方のお話ですが、地方の方で、遠くから来られたわけですが、その方が率直に申されました。「通ちゃんでしょ…」でも気持ちがどうしてもと言う思いで今日は来ましたと、私は今までお話したような内容を説明しました。もうお金がないから今国会には来られないと言っていましたが、来られなくても新聞でもテレビでもご覧になって国会情勢を把握していただきたいと…、いずれにしても最後まで頑張ることが大事です。これから、公聴会も開くわけですが、福井と横須賀ですから行くのは大変ですが、恐らく福井では「北朝鮮」問題(北朝鮮脅威論)を恐らく与党側は組織してくるでしょう。私たちも準備して反論する予定ですが、横須賀も同様でしょうが、テレビや新聞で状況を把握していただいて運動を展開していただきたい、とにかく最後までお互い頑張ろうではありませんか…これで私の国会報告を終わります。

司会 どうもありがとうございました。

 それではこれから今日の中心テーマである石川播磨重工の渡辺さんから「有事法制」の先を行く職場の実態をお話いただきたいと思います。

石川播磨の現状と有事法制の先行事例

 本日は私たちの置かれている厳しい職場の実態を聞いていただけるということで誠に有難うございます。私はただいまご紹介いただきました人権(人間)回復を求める石川島播磨原告団の渡辺と申します。

私たちの置かれている状態

 現在皆さんもご承知と思いますが裁判をやっております。お話に入る前にそのことについて自己紹介がてら触れさしていただきたいと思います。

 争議を始めて裁判は四年目に入っております。

 資料の中に「石播はZC名簿を破棄し差別を是正せよ」と言うタイトルのビラがあります。ZCとはゼロ・コミュニスト(共産主義者の撲滅)の意味です。実際には労働者の暮らしと人権を尊重、守ろうとする者は、この名簿に載せて激しい弾圧を行って来ました。こういうことが一九七〇年代からずーと行われてきたわけです。ですから職場で物も言えない、何かまともな事を言うと「あいつは赤だ」だと徹底的に迫害をする。(賃金の差別、仕事も取り上げる。口も聞くな、目を見るな「見ると挨拶をしなければならないから」香典を受け取るな、職場の行事は一切参加させるな、)こういうような形で見せしめが出てくるんです。こうした見せしめは「あの人のようになりたくなかったら会社の言うことを聞け」と、労働組合は連合系の御用組合なので、会社と一緒になって差別をやっています。こうした状態では職場の中に人権があるのか?ということで闘いに立ち上がっているところです。昨年(02)の一〇月にZC管理者名簿が暴露されました。全事業所で名簿を作っていたんです。これにはA・B・C・Dとランク分けがしてあってその名簿には「奥さんが地域でコーラスグルーブをやっている」とか、地域の情報も警察と連絡をとって集めている。それから本人が「癌」だとかという私病も書いてある。賃上げが不満で苦情を言ってきたのでランクがBからAに格上げされているとか?こういうような生々しい名簿が出てきたものですから裁判長が、会社に対して和解の勧告をしてこの一月から和解交渉が始まっております。前回五月の二十日、ZC名簿は自分の口からやりましたとはいえないのですが、否定は出来なくなって来ている。「ZC名簿はあってはならないものです。」和解が成立すると言うことがはっきりした段階(追求されない状態)になったら、それについて踏み込んだ判断をしたいというように言っています。私たちは「差別の根絶」のために謝罪させるというのが基本です。ですから今後の運動が鍵になると思いますのでご支援を最初にお願いをして本題に入りたいと思います。

有事法制の先行事例

 高見沢会長からお話がありましたように、平成一三年にテロ特措法が出来ました。いわゆるアフガニスタンの問題を契機にして米軍支援のために作った法律で、自衛隊の艦艇がインド洋に出てゆくことになったわけです。すると、直ぐというより、実はテロ特措法が出来る前から話があったのですが、「今度自衛隊が出て行く、現地で何かトラブルがあったら修理に行かなくてはならない。準備をしてほしい。行く人の名簿をつくってほしい、その人のパスポートのナンバーも登録してほしい。」、該当職場は、びっくりしてしまったわけですが、応ぜざるを得ない…その職場の人から私のところに連絡があったのです。先ほどお話した様な職場の状況ですので「行くのは嫌だ」と言っても、或いはそのことを労働組合に相談しても差別される。それと闘っている私たちならば話ぐらいは聞いてくれるだろう?と、相談してくれたようです。

 私たちは事実を知って「これは物言えぬ職場の典型的あらわれだ」と言うことで、十万枚のビラを作りました。昨年の一月から三月、四月ぐらいまで五万枚のビラを撒いたときに、朝日新聞から取材があったんです。お読みになった方もいらっしゃるかもしれませんが、五月の四日の日です。朝日のトップに「民間人も戦地に派遣される動きがある」と大きく報道された。それで国会でも取り上げられた。というようなことがあって、それまで、「防衛秘密を守れ」と言われていますから、「行け」と言われていることも言えない。「嫌だ」と言うこともいえない。実際行かされて帰ってきた人たちは「どこで何をしてきたか」も言えない。という状態ですから、人知れず行って…途中でテロにあって犠牲になってもうやむやにされてしまうのではないかという不安な状態でいた訳ですけれども、マスコミでここまで、明らかになれば、あんまりひどい事はしないだろうと「相談してよかった」という声もいただきました。結局のところ、インド洋派遣自衛艦一覧と言う表がございますが、テロ特措法が出来てすぐ〇一年の一一月九日に「くらま」・「きりしま」・「はまな」という護衛艦二隻と補給艦一隻が出て行きました。

 いまは、この四月に「イージス艦」の「こんごう」と「ありあけ」・「はまな」が行っています。「はまな」という補給艦はしょっちゅう、出て行くので乗組員も大変だと思います。補給艦を中心にして現地で米軍に無料で油を補給するのが任務なんです。今までにすでに一八五回給油して、お金にして百五億円分無料で贈っているんです。この前、キテイホークが帰ってきて、艦長が「日本から給油してもらって有難う」なんて言っちゃったもんだから、アフガニスタンのためだけではなくて実はイラク戦争の支援を行ったことがはっきり報道され、明るみに出ました。

 話は少し横道にそれましたけれどこうした形で自衛艦は出て行っていますが、なぜか昨年の七月から現地に修理に行かせましたと発表しだしたんです。(発表ではなくて聞かないと答えないんですが…)現在のところは七回二五人が行かされています。どの企業から誰がどこに、行かされたかという事は一切明らかにしていない。私の職場で考えてみるとイージス艦の場合では、あの職場の彼がいない、行ったらしいとか?誰々がいないとかということで解かるのです。そういう事なんで「人知れず」行かされているというのが石播の職場の実態です。

 それで、僕たちのことも取材してくれた岩波ブックレットと言う本が出ております。この本が防衛庁の資料を元に書いてくれているのですが、どういう修理をやるか?例を申し上げると資料に「ひえい」が一〇月二九日蒸気タービンの故障で修理に四人行ったとあります。会社も発表しないし、防衛庁も言わないのですが、石川島播磨から派遣されたことは間違いありません。二六日に行けと言われて二八日に飛行機で出てるんです。大慌てで出て行って二九日の午後四時三〇分に現地(現地がどこの港か解からないのですが、多分オマーンらしい。アラビヤ海の奥で、もう少し行くとペルシャ湾という所です)に到着、午後四時四〇分に「ひえい」に乗艦しているんです。ですから着いたらその足で乗っている。すぐ工事日程を打ち合わせ、午後六時に修理を開始、欠陥部分を切断して午後九時にその部分を溶接し、深夜の零時に溶接部分の冷却処理をしている。不良箇所を溶接後、翌日の午前五時になって終了という記録ですので徹夜の作業である。午前七時になると溶接部分の検査をはじめ水圧検査も行い、午後一時に修理を終えて工具を撤収、午後一時三二分に下艦している。どういう状況で作業したのか解かりませんが、飛行機で行ってすぐに徹夜作業をやらされている。まあ行かされた方は早く帰りたいと言う気持ちもあるのかもしれませんが、こんな状態ですから行った人の人権など二の次と言うことになるのではないでしょうか…。

 レジメの三番目のところですが、この前、四月の一五日、防衛庁に要請に行ったんです。もしも事故が起きた場合の責任と補償を問うたのですが、これに対する回答は、「自発的に契約をして行っているんだ。応じた企業の責任なんだ。」と言うのです。

 それでは「危険だからお断りしますと断って良いんですか?断っても良いと言ってくれ」と念押しすると駄目だとは言わないのですが、「他に修理するところがなければ何度でもお願いする」との答えでした。何度でもお願いされたら防衛庁は大切なお得意さんですからお願いを聞かざるを得ないと思います。「それからテロはどこに居ても起こりうる。それは、現地であるかもしれないけれど日本でもあるかもしれない、」こうした論理でした。それから先ほど言ったイラク戦争用にも給油しているのでテロ特措法にも違反しているのではないかと聞いたところ、その時はキテイホークの話は出ていませんでしたから「アメリカと交換文書で確認しているのでイラク戦争に使われていないと固く信じている。」と答えておりました。いずれにしても派遣された民間人を責任を持って守ろうとか…そういうような事は考えていない、要するに民間人派遣の既成事実を作り上げておいてそのうち、有事法制などを作って、義務化しておっかぶせて将来は「行って当然と」言うところへ持っていこうという意図ではないかと思います。

 有事法制の関連で言いますと、有事法制が発動されるときとは、武力攻撃をされたとき、或いは予想されるときです。しかし、そうではないときでもテロ特措法に基づいて艦艇は海外で活動しているわけです。そしてアメリカと一緒になって、先制攻撃戦略に基づいて活動するわけですから日本は口実があれば、先に攻撃する危険な国と見られるのではないでしょうか。そういう立場ですから自衛隊の艦船が、当然攻撃を受ける可能性は益々強くなる。それは「武力攻撃を受けた。或いは受ける危険がある」と言うことで日本(自衛隊)が戦争に入る事態を自ら作っているのではないでしょうか。いずれにしてもそういう状態になる前から民間人が徴用されて行っているということです。私たちの職場、修理部門の人たちは、良い悪いは別として仕事に対する責任感から「自分が国防を担っているんだ」と自負している人達が多く居ます。にもかかわらず、勝手に自分で身を守れとか、国は責任を負わないと言うのは、余りにも我々を軽く見ている、と言う怒りはあるんです。

 四番目ですが、石播は、当然防衛庁の要請を断れない、また現場の労働者も先ほどから説明しているように断れないというような状態になってきています。しかも労働組合も闘えない状態になってきています。組合の職場集会で、イージス艦の修理で石播から七人派遣されている。組合員が行かされて危険な目に逢っているではないか?組合員の命を守るためにもこの問題について調査をしろと要求したんです。委員長は「これは国防上必要なことで、当社の任務である。これを認めない者は業務を続けることはできない。」(今度七人行っていると言うことは発表されていないので)「ニュースソースはどこだ。それを明かさなければ検討しない。」会社が会社なら労働組合も労働組合と言うひどい状態です。それに加えましてテロ特措法が出来たときに自衛隊法が改訂されて「民間人も防衛秘密を漏らしてはならない」という守秘義務が加わったんですね、「懲役五年以下」なんですけれど、それが悪用されて何でも「防衛秘密」、「防衛秘密」なんです。現地に行くことも、どのコースで行ったかも防衛秘密なんです。こう言う形でものが言えない状態がエスカレートしてきています。

 五番目に私たちの職場は、紹介が遅れましたけれど西東京市の田無工場で、航空宇宙事業本部なんです。主に自衛隊の軍用機のジェットエンジンをつくっています。イージス艦なども造っている海洋船舶事業部は、横浜にあります。軍事産業の比率は、一七%位しかないんですけれども、やはり軍事産業が特徴ということになると思います。

 例の周辺事態法と言うのが四年前の九九年五月に出来ました。それで日本は米軍の航空機、艦艇、車両などの修理義務、つまり米軍が戦争を終わって帰って来たら、米軍との直接契約で修理をやれよということで、まだこの時は直接戦争に巻き込まれると言うことではなかった。むしろお仕事が頂ける。みたいな面もあったんですけれど、二番目に「テロ特措法」になりまして自衛艦がインド洋に派遣される。何しろアメリカ政府がテロリストが居ると言い出したら米軍は出て行く、アメリカ軍が出ていったら日本も出て行く。そういう仕組みになっているわけです。けれどもその米軍に追従する自衛隊の飛行機や艦船の修理をしなければならない。だが実態は先ほど申し上げたように自発的な契約だと言うことになっている。

 今度の有事三法では、先ほど言いましたけれども「協力義務」ということでかぶせられてくることになるわけです。それでは具体的にどういう形で、やらされるかと言うと、先ほど大門さんがおっしゃって居りましたけれども内容はさっぱり解からない、例えば病院ですとか、公共施設などは「指定公共施設」ということで協力が義務付けられる。兵器生産職場の場合はどういうことになるのか?それだけではなくて戦争に必要なさまざまな物資の生産設備、それは食料であっても、何でもそうですけれども、そうしたものに対してどのように指定され、どの程度協力義務があるのか?それに基づいてそこで働く労働者はどのような制約を受けるのか?はっきりした内容は見えていませんが、非常時だということで、目一杯いろいろな権利が停止されて働かされるようになるのでは?と思います。(そう言ったことが出て来た段階で有事法制の本質が一般の人たちの中にも見えてくるのではないか?)今回は通ってしまう可能性はありますけれども、そうした段階で、反撃のための第二ラウンド、第三ラウンドがあって、そこで有事法制をつぶせるんだということが先ほどから大門さんのお話を聞いていて感じているところです。

 しかし協力義務が罰則付きかどうかは、今の職場では、問題にならない状態です。罰則がなくても業務命令で現実に行かされてしまうんです。(断れない)もっと言ってしまえば業務命令だと言われなくても行かされる、行ってしまうんです。こうした労使関係が大変危険だと思います。

 現在の職場の中はリストラの対象にされないように、如何に会社に睨まれないようにするかとか、少しでも、人より差をつけていかないと生き残れない、というのがあるものですから、「どうせ断れないんなら、進んで行って差をつけろ」みたいな傾向すら出ています。団結を忘れるとそこまで追い詰められていってしまうんです。そういう状態にならないように私たちは「人権を主張し、人間性の回復」の闘いを主張し続ける必要があるんだなあ、と感じています。

 差別をなくして職場の団結を回復することが何よりも大切だと痛感しています。

 だから私たち原告団はいろいろ困難な状態はありますけれども、闘わざるを得ないし、闘っているわけですけれども、やはり争議団が、会社の攻撃に立ち向かい、人権を守ろうと思ったら労働組合として団結していかないと本当の将来展望は開けてこない。という風に私たちは感じてきています。この辺はいろいろ議論しながら進めていかなければなりません。

 昨日、森山法務大臣が言っていたことが気にかかったのでメモしておいたのですが、日本は益々「テロの標的にされる危険がある」と法務大臣自身が認めている。今日本の企業は海外に多くの生産現場を持っており、アメリカに協力してイージス艦まで派遣して、アジアに睨みを利かせようとしている、そういう日本の企業の中で、「石川島播磨」と言うのは、いわばその尻馬に乗って戦争で儲けようとしている企業です。しかし、石川島播磨の防衛生産は先ほども言いましたが全体の一七%です。一方海外との取引、主として輸出の方ですけれども、全体の三〇%(変動がある)以上あります。ODAがらみで問題があるものもありますが、発展途上国のダムの(水門ですとか、港湾の陸上げ設備だとか、製鉄などのプラントなどです。こうした海外からの受注にとって軍事協力企業のイメージは、むしろマイナスではないか?と思うんです。いろいろと営業活動に支障が出ていると言うことも聞いております。日本の企業が何時までもアメリカの戦争戦略に乗って海外に出て行くというやり方が本当に、利益になるのかということを良く考えなくてはいけないだろうと考えています。株主総会にも行って訴えています。今のところ会社は耳を傾けませんが、私たちは正しい道だろうと考えています。

 唯軍事生産は大変な旨味があります。たかが一七%という数字ですが、これに頼りたくなる麻薬です。一つは、今不況の中で競争、競争と単価をたたかれてどこの企業でも苦労するわけですけれども、ジエットエンジンや軍艦を造るところは限られていて、三菱とか、石川島とか川崎重工とか、それがうまく順番に(体の良い談合です、)多分防衛庁が決めて順番にやる随意契約ですから、競争はないし、原価は全部、掛かり高(掛かった費用)で、その原価に利益率が掛けられたものが「契約金額」です。こんなうまい話は無いんです。しかも原価というのは最近の日本航空の水増し事件のようなやり方で増やすことが出来るわけです。誰々が何日の何時からはじめ、何時に終わりまましたと仕事にかかった工数をコンピュータに入れたものを集計するシステムが作られているのですが、このシステムに他の作業(民間向けの仕事)をやってもやった工数を入れてしまうわけです。これは、私たちとすれば問題にしていかなければならないと考えています。

 また、新しいエンジンを開発するとか、新製品を作る場合は、通常民間ですと自分のところのリスクで研究開発しますが、この研究開発も防衛庁と契約して請求できる。そして開発した技術は民間企業向きの仕事にも利用できる。お金をいただいて新しいエンジンを開発できるなんて、非常に有難いシステムです。もちろん苦労も沢山ありますが手厚い保護があるわけです。

 それからもう一つはエンジン専用の運転施設、これは、何億何十億という膨大なお金がかかる設備なのですが、これも、お金が出るんです。ですから工場を防衛庁のお金で作ってもらっているようなものです。

 こうしたエンジンの運転施設を民間からの注文にも流用する。その際も、表向きは「防衛庁のエンジンだけしか使っていません」と言いながら実際は使っている。この方法も会社とすればメリットが出てきます。

 それから、専用の治具と工具の購入費も出る。治具や工具は防衛庁の注文品にしか使えないとして実際は民間の航空機のオーバーホールなどにも結構使えるわけで、民間向けに流用するのは公然の秘密になっています。契約条件では民間では中々無い前渡し金がポンと出てくるし、途中でも何割完成しましたから何割という形で支払われる。しかも、現金払いですから金詰りと言うのは無い。

 さらに納入すれば、六ヵ月経つと何が起きてももう瑕疵期間が過ぎましたから、ということで、補償責任が無いんです。エンジン以外の付属部品の瑕疵期間は、一年です。先々週でしたか朝日新聞の一面に自衛隊の練習機でC4という飛行機のエンジンが急に出力低下してしまう事故が相次いでいるという報道がありましたが、これは、エンジンの中の燃料制御装置に金属片が入ってしまっていて誤作動を起こしてエンジンに燃料が行かなくなった、あわや不時着という事故でした。石播が納入したこの装置は七百台全部修理することになりました。瑕疵期間の一年を過ぎているので有償で直し、一年経っていないものだけ(一〇〇台分)補償(無償)する。ミスをしても儲け仕事が増えるという民間では考えられない契約になって来ています。

 もう一つ、これから問題にして行こうとしていることなのですが、毎年会計検査院が、検査に来ますが、その前に、工場に常駐している防衛庁の駐在官と工場が相談をして、会計検査院に見られるとまずいもの、先ほどお話をした治工具の貸し出し台帳(民間向けの作業にも貸し出しているから)などは隠せ、水増しの疑惑を持たれる安い工数の報告は、検査院が目の届くところではしてはならないというような打ち合わせをしています。日本飛行機だけではなくて防衛庁と軍事産業は癒着している。というところがいろいろあります。

 有事法制の問題とは少々離れてきてしまいましたが、最後に申し上げたいことは、このように問題点が沢山ある兵器生産を続け、海外の修理にも行かせるために、「ものを言えぬ職場」、にしておきたいのでしょうが、反面大変な矛盾が出てきています。成果主義の中で、人に自分のノーハウを教えなくなりました。熟練工の人たちが若い人に自分のノーハウを教えてしまうと「給料の高い熟練工はお前はいらない」と言われてしまう。こうしたことを恐れて教えないまま、退社していく、技術の伝承が出来なくなってしまっているのです。以前にやった工事をまた受注しても、知っている人はもう居ない。というような状態になってきています。物造りの風土やそれを伝承していく仕組みが壊されて深刻な問題になっています。さらに成果主義は、自分を守るために、自分のミスは隠してしまう。しかも他人のミスは自分の得なんですね。

 そういうやり方に加えて差別がありますから、そう言ったことを率直に問題にして話し合うことが出来ない。ミスがでたら「けしからん」ではなくて「なぜ出たんだろう?」「再発防止のためにどうしたらいいんだろう?」とミスから学ぶということをしないとミスは無くならないし、企業は伸びていきません。私たちは差別を無くして、石播と言う会社をまともな会社にして行きたいと考えて頑張っています。ご支援のほどよろしくお願い致します。


後書きと新宿の活動

 昨年、四月政府与党の有事法制国会上程を機に新宿の平和勢力が繰り広げた街頭行動は、七月二四日「高田の馬場」駅頭で五二次に及んだ。

 昨年の通常国会には世論と私たちの廃案運動が功を奏し、継続とし、秋の臨時国会は、ほとんど審議すら行われず、アメリカのアフガンに続くイラク攻撃が端緒に現れ、これを食い止める側と、攻撃しようとする側の攻防戦は世界的に国連を舞台に続いた。新宿の平和勢力は、国会情勢が「有事法制」より、このイラク問題が重点になっていると判断。イラク攻撃反対のキャンペーンをはり、街頭行動を繰り広げた。今年の通常国会も前半は、イラク攻撃、さらに、白装束軍団を登場させ、マスコミ報道をそらせ、有事法制を成立させる。さらに追い討ちをかけるように、イラク派兵問題と矢継ぎ早に有事法制の具体化を図っている。

 表は日米同盟の重要性を強調しながら着々と日本軍(自衛隊)の海外派兵を具体化し、軍国日本に変貌させようとしている。こうした動きをどう見ているのであろうか…

 いまイラク攻撃の是非も問われている。国連決議なしに攻撃した米・英、尻馬に乗った日本、そして、今、口実として使った「大量破壊兵器」も見つからず、超大国アメリカが「石油の利権」のために、或いはアメリカの軍需産業のてこ入れに使ったことだけは明らか。イギリスの労働党はこの戦争に参加したことで地方選挙に大敗、この戦争には世界の千万人から千五百万人の人々が反対の意思表示を行った。日本の運動や参加者は非常に少ない数値である。しかし、有事法制がプログラム法と言われ、今回のイラク支援特別措置法の自衛隊海外派兵もその保管法に過ぎない。今後さらに国民の自由を拘束し、罰則を含めた法律が上程される。このときが勝負、圧倒的優位に立つ米英軍は僅かの期間でイラクを占領し、終結宣言を行ったが、アメリカ軍の戦死者は「湾岸戦争」を超え、終結宣言後の戦死者が五十人。マイヤーズ統合参謀本部長もまだ「戦争状態」と言っている。有事の学習会と共に、活動が今後の運動の出発点となり、糧となること念じます。


渡辺鋼
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