知的所有権と多国籍企業:A) 生物に関する知的所有権

 1)1990年代、生物資源利用に関する国際協定と機構が締結、設立された。生物多様性条約とWTO(世界貿易機関)の設立である。それらを多国籍企業-アグリビジネスがバックアップした。その結果、米国モデルが世界の生命特許法の標準となろうとしている。

 2)1992年、ブラジルでの地球サミットにおいて生物多様性条約が採択された。先住民の生物資源への権利が認められたと言われるが、根本的には生物資源に関する知的所有権が国際的に認められたことを意味する。NGOと多国籍企業団との闘いでは、多国籍企業の実質的勝利であっだとうわさされている。
 石油化学文明の全盛期であった20世紀文明の衰退とそれに代わる情報・生命産業の世紀の到来に向けて、どのような価値観とシステムを構想するのか、その基盤形勢に向けた世界のNGOと多国籍企業団を両極とした闘いの舞台がブラジルサミットであった。

 3)現在、生物関連の研究者による特許取得は急速に広範にすすんでおり、細胞やDNAレベルに及んでいる。アグリビジネスと研究者の目標は、植物、動物、微生物さらにDNA(人間も含む)特許に関する独占的支配システムを作ることである。

 4)米国では1930年に植物に関する特許法が成立し、1980年に遺伝子組み換え微生物が特許の対象となり、1985年には植物と種子が特許の対象に、1987年には動物にも特許の対象範囲が及んだ。そのなかには人体の一部もその対象に含まれており、人の細胞やDNAも商品化可能となった。
 小さなバイテク企業が林立しているが、巨大生命産業が買収合戦を演じている。巨大バイテク企業、例えばモンサント社は世界規模で同様の独占的生物特許権を確保するためにWTOを頂点とする、貿易と投資と知的所有権に関する協定を利用している。

 5)特許権はもともと、主として工業発展のための科学技術の進歩のために、発明に対する排他的権利を一定期間発明者に保障するものとして登場したが、今や、利潤独占のための企業の排他的手段と化してしまっている。

 6)1960年以降、工業国の農業に化学、機械、商業がもたらした急速な変化は、農業を農薬、化学肥料、種子、機械企業と巨大流通企業がコントロールする工業的農業へと移行させてきた。種子のF1化のみならず遺伝子組み換えは、農業のモノカルチャー化、工業化を極限まですすめさせようとしているかに見える。

 7)商業的な植物の品種改良と種子販売は、バイオ産業の巨大企業が支配しており、それらは種子、化学肥料、農薬などの市場占有率を上げている。それは世界的規模でなされている。世界の生物多様性の80%は南の熱帯、亜熱帯地域にあり、従って南を支配することは、種子と自然の富を支配するために、北のバイオ産業にとって不可欠になっている。

 8)生物多様性と知的所有権をめぐる北と南の闘いは、世界的規模になっていて、21世紀の明暗を分ける分岐点の一つになろうとしている。世界のNGO−農民と多国籍企業を両極とする世界大の闘いで勝利しなければ、生物多様性の破壊、強いては生態系の食物連鎖の崩壊を結果するかもしれない。


「B)ガット・ウルグアイラウンドとWTO」へと進む


田中正治
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