農の21世紀システム:4.環境と文明

 1)メソポタミヤ文明、黄河文明、ギリシャ文明などの衰退が、森林の破壌と農地の拡大、土壌の劣化に起因している事は良く知られている。にもかかわらず、近代産業革命を起こしたイギリスが、国内の森林を破壊したにもかかわらず文明の衰退におちいらなかったのは、なぜか。新大陸アメリカの森林を収奪して産業革命のエネルギー源に利用し得たからである。

 2)アメリカは、今日のグローバル資本主義のモデルを作り上げたが、その特異性は石油という特殊に高度な低エントロピーエネルギーに依存することが出来たからである。アメリカは広大な土地と労働力とのギャップを、アフリカ人の奴隷によって埋める一方、他方で、工場の流れ作業、互換性部品システム,農業の機械化を1800年代中頃につくりあげた。長距離輸送は汽船と汽車で解決した。化学肥料と化学農薬の大量投入と機械利用によって農業の工業化・資本制化を一気にすすめた。20世紀から始まった大工業におけるテーラーシステムは、石油エネルギーの大量投入と電気利用による工場での作業効率上昇をもたらしたが、同様の価値観と労働観は、今日のアメリカ農業を完全に支配している。単作化、水と石油、農薬と化学肥料の大量投入、機械化による投資効率アップがそれである。投下した資本を短期間で回収することが農業経営の必須条件であり、地力が喪失し、耕作が不可能になる前に投下した資本を回収できるかどうか、さらに、利潤があげられるかどうかがもはや、唯一の関心事になってしまっている。そういうわけで、地下水の枯渇、土壌汚染、表土流出、砂漠化など文明の基盤の崩壊現象が顕著に現われていることにたいして、統御できる社会経済システムを持ちえていないのである。農業にたいする工業の論理の支配、農の論理の工業的論理化は、不可避的に文明の基盤を崩壊に導くことになろう。
図5参照。


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田中正治
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