種子は誰のものか:F)多国籍化学企業・モンサント社

 1)世界が工業化農業に変貌した結果起こったことは、何であっただろうか。

  1. エネルギーの大量投入による食料増産体制。特に工業諸国では、農業の工業化によって増産体制を確立したが、それは同時にエネルギー効率の低下を結果した。
  2. 地球環境破壊型農業化。土壌、水質、大気汚染と生物多様性の破壊。
  3. モノカルチャー−輸出作物生産による貧富の格差の増大。特に、アフリカでの飢餓の頻発。
  4. 米国の食糧国家戦略化による第三世界諸国の食料輸入国化。
  5. 農産物大量生産による工業諸国での食糧の質的悪化。農産物と人間生命力の低下。
  6. 1980年代中頃以降、化学肥料の効力減退の健在化。農薬とワンセットで使用されてきた化学肥料は、強酸塩の土壌残留によるミネラルバランスの劣化および土壌小動物、微生物の死をもたらし、植物の成長を不自然にする。
  7. 水、農薬、化学肥料の大量投入による表土の流出と砂漠化。

 2)こうした事態をにらんだ、多国籍化学企業モンサント社のコンセプトは、「人類が直面している数々の問題を解決するためのビジョンを持ち、環境に配盧する企業」ということである。世界の食料危機を救い、低農薬投入の環境にやさしい農業、その先端こそ遺伝子組み換え技術を応用した「第二次緑の革命」だというのだ。

 3)遺伝子組み換え植物は、植物のDNAに微生物や動物のDNAを組み入れたりして、種の壁を越えて人工植物を「創造する」ことにその本質がある。1988年のトリプトファン事件で証明されたように、副産物の毒性によって、38人が死に、1500名がその後遣症に今もなお苦しむといったような事態が、今後起こったとしても不思議ではない。生物のDNAの80%くらいは休眠DNAといわれており、それらがDNA組み換えに刺激されてどのような働きをするか注目されているところだ。スーパー雑草やスーパー害虫の発生も報告されている。また、生体の免疫力低下も取り沙汰されている。既にマウスの実験では免疫力の低下が証明されたといわれている。

 4)「夢の物質」フロンが、オゾン層破壊の元凶であることが、発明40年後に判明し「悪魔の物質」に変わったように、「永違のエネルギー源」プルトニウムが原発事故の恐怖を人々に突き付けているように、「夢の化学物質」プラスチックが解決不能のごみ問題を世界に引き起こしているように、自然界に存在せず、自然界に帰ることのない物質を創成することは、地球生態系と人類の未来の世代に取り返しのつかないことを結果するのではないだろうか。遺伝子組み換えによる人工生物の創成は、そうしたレベルの問題である。
 生体の中になにが起こっているのか。自然はどのようなしっぺ返しを人間にするのだろう か。

 5)遺伝子組み換え種子であるモンサントのラウンドアップレディー大豆と、除草剤ラウンドアップのセット採用を、農民が契約すれば、その契約の内には特許料の支払い、種子の自家採取の禁止、3年間モンサント社による畑の監視等が含まれる。従って、モンサント社の遺伝子組み換え種子とラウンドアップ除草剤を買い続けなければならなくなる。「バイオ農奴制」といわれるシステムである。フランスの農民、ジョゼ・ボヴェの遺伝子組み換え作物引っこ抜き闘争や最近のカナダの農民・シュマイザーさんの闘い、茨城県での遺伝子組み換え大豆鋤きこみ闘争などは、遺伝子組み換えと種子の資本独占がもたらした災禍に対する勇気ある農民の闘いである。

 6)業を煮やしたモンサント社は遺伝子組み換えの複雑な過程を経て、二代目には種が自ら作る毒によって自殺し、発芽しない種子を開発した。いわゆるターミネイター・テクノロジーである。このターミネイター種子を農民が利用し続けるなら、自家採取は完全に不可能故に、永続的にこの種子をモンサントから買い続けなければならない。種子の完全な私的独占である。「バイオ農奴制」は完成されることになる。種子は農民の手から最終的に離れることになるのだ。


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田中正治
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