種子は誰のものか:G)公有地と民衆の種のための闘い

 1)インドのフェミニストで、エコロジストでもあるヴァンダナ・シヴァのエネルギッシュで知的で魂を揺り動かすスピーチは、現境、生命、農業に関わる世界の人々を驚かせている。インド農民の種子と共有地のための、多国籍アグリビジネスに対抗する闘いの前線からの叫びであり、知的メッセージなのだ。生命の多様性と精神の多様性は彼女のメッセージの根底にある。その実際的政策が種子と共有地の防衛と拡大である。

 2)ヴァンダナ・シヴァは一方で、「バイオテクノロジーの民営化の究極的表現は米国通商代表部、世界銀行、GATT、世界知的所有権機関・WIPOを通じて活動している多国籍企業が、地球上の全ての生命を企業が私有財産として所有することを可能にする統一的な特許制度の策定を、必死に要求しているということである。」「世界規模の特許保護によって、アグリビジネスと種子業界は、真の地球支配を達成しようとしているのである。」(『生物多様性の危機』)と多国籍企業の野望を正面から指弾する。

 3)そして他方で、「土着のコミュニティーでは、最初は個人によって取り入れられた改良もあるが、改良は社会で共有するものと見られている。よって改良の結果は、それを使いたい人は誰でも自由に利用できる。その結果、生物多様性のみならず、その利用もまた共有で、コミュニティーの内部や、コミュニティー相互間での交換も自由だ。改良の基礎である共有の資源の知識は、何世紀にもわたって次の世代に受け渡され、また、より新しい利用法を取り込んできた。そうして数々の改良が、何度も何度も共有の知識として蓄積されたのである。この知識の蓄積が、今日の農業植物の多様性や医薬植物の多様性に、幅広く計り知れない貢献をしているのだ。それ故、資源や知識を個人が『所有する』という権利概念は、土着のコミュニティーにはなじまないのである。この『所有』の権利概念が、生物多様性の保謹に非常に重大な結果を引き起こしつつ、土着の人々の知識の障害になることは疑いない。」(『共有地の囲い込み』1997年ヴァンダナ・シヴァ)と指摘する。

 4)3分の2を占める土着のコミュニティーの権利を守るために、「国家と市場を越えた視点」を持ち、コミュニティーを強化して、種子と共有地を再び取り戻す闘いを、インド農民とともにヴァンダナ・シヴァは繰り広げている。
 1960年代一70年代に、米多国籍アグリビジネスによって導入された「縁の革命」の後にも、インドでは、種子の80%以上は農民によって自家採取されいるといわれている。今、遺伝子組み換え種子を核とする「第二次緑の革命」に対してインド農民は激しく抵抗している。それは、所有をめぐる闘いであり、自然に対する人間のありように関する闘いであり、人間と人間との結合の在り方に関する闘いでもある。


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田中正治
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